野球肩(やきゅうがた) ~投球肩~
野球、ソフトボール、テニスなどスポーツをおこなう上で肩ほどよく使用されている関節はなく、肩のスポーツ障害は膝(ひざ)の障害に次いで発生頻度が高いと言われています。
特に野球は大人から子供まで親しまれているスポーツであり、その競技動作(投球動作)において肩関節は非生理的な運動を強いられ、そのような運動を繰り返す事によって様々な障害を引き起こします。
広い意味での野球肩と言われているものの中には、投球動作以外でも起き得る腱板障害(けんばんしょうがい)、上腕ニ頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)、動揺性肩関節(どうようせいかたかんせつ)など肩の各種疾患が含まれますが、特にここでは投球動作でのみ発症する障害(ベンネット障害)と発育成長期の肩のスポーツ障害としての上腕骨近位骨端線離開(じょうわんこつきんいこったんせんりかい)(リトルリーグ・ショルダー)を説明していきたいと思います。
【ベンネット障害】
ベンネット障害とは、長い年月投球動作を繰り返す事によって、上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)肩関節後方の関節のふくろが過緊張し、肩関節を形成している肩甲骨臼蓋(けんこうこつきゅうがい)後上方に骨棘(こつきょく)と言う軟骨が生じます。それが少しずつ大きくなる事によって、上腕骨頭(じょうわんこっとう)に衝突したり腋窩神経(えきかしんけい)を刺激したりします。
症状として、フォロースルー期に肩の後方に痛みが走ったり、大きくバックスイングをしたときにも、ゴリっと音がして肩が抜けたような状態になり、数日間痛みが持続するという事も起こってきます。
治療としましては、軽症の場合、投球を禁止し局所安静に努めハリ治療やマッサージをし経過を観察します。しかし、それでも頑固な疼痛の続く時は、必要な場合において手術療法も考えられます。
【リトルリーグ・ショルダー】
発育期には、骨端線(こったんせん)(骨端軟骨層)という骨の成長を司る軟骨
層があります。リトルリーグ・ショルダーとは、その軟骨層が閉鎖するまでの時期(8~15歳くらい)に無理な投球動作を繰り返し行う事により、徐々に骨端線が離開していく障害です。
症状は、投球動作による肩痛が主ですが、痛みの場所は他の野球障害のように肩の前方または後方に限局しておらず、骨端線全周にわたって痛みが存在します。又あらゆる方向の肩の運動で痛みが誘発されます。
治療としましては、まず投球を禁止し、三角布・バンドによって3週間程度固定します。
または、ハリ治療などを行います。
その後痛みが軽減すれば、肩関節の正常な運動範囲の獲得を第一の目標とし、徐々に筋力トレーニングを開始します。再発予防としては、肩の痛みがあれば投球を中止させる、投球回数を制限させる、変化球を投げさせない等指導者の認識が必要となってきます。