腓骨(ひこつ)神経麻痺
腓骨神経麻痺とは、足の神経麻痺のうち最も多い麻痺であります。
原因は、外傷によって直接神経が切断される場合と、圧迫される場合とがあります。腓骨神経、膝の後ろから腓骨小頭(膝の下やや外側の骨の出っ張り)の下を通って前方に出てきます。この部分は皮下に直接神経が触れるので、容易に圧迫されやすく、麻痺が起こりやすいところです。圧迫の原因は、①膝の後ろの骨・軟部腫瘍(しゅよう)・骨折片による圧迫。②膝の外側部での打撲や挫傷。③長時間の正座・泥酔時の圧迫。(この場合、麻痺がわからず歩行開始時に、足をぐねって捻挫(ねんざ)と誤り、来院することがあります。)④怪我の治療中のギブス、固定副子の圧迫等によっても起こります。症状は、足および足指をそらす運動が不可能となり、足先が下垂(かすい)します。歩行に際しては、普通に足を持ち上げたのでは足先が地を離れず、患者さんは膝を高く持ち上げつま先から着床し踵(かかと)から着床する鶏様歩行(けいようほこう)となります。知覚麻痺も足の甲の部分全体に認められます。
治療は、関節が固まるのを予防するために夜間装具や歩行用の装具を装着します。場合によっては、膝の後ろに適当なスポンジパット等を入れ保護しておく必要があります。これらの保存的治療によって、神経損傷が回復すると知覚異常も正常となり、正しい歩行も行えるようになります。